鬼神を怒らせた私 その1
鳥肌が立った。
頭の中はパニックで真っ白になった。
…僕は確かに死さえ覚悟した。
あれは、たしか3週間くらい前の事だった。
突然「You`ve got mail . You`ve got mail.」と電話がなった。
……「もしもし?」
そう、僕は電話着信とメール通知音を間違えて設定していたようだ。
紛らわしい。
電話に出てみると、相手は東北放送の営業部部長の I さんだった。
I さんは僕が仙台にいる際に非常に良くしてくれた方で、キャプテンになった時も番組で特集を組んでくれたり引退した際にも送別会を催してくれたり、ととにかく気にかけてくれて良くしてくれた方だ。
9ヶ月ぶりのやり取りにお互い興奮しつつも、簡単にお互いの近況報告。
僕は早速、着信音とメール通知音を間違えて設定した話をした。
……I さんには何の話か伝わってなかったみたいだけど。
着信音の話が伝わらないことに憤りを感じて、さらに説明をしようとしたその時だ。
「金子くんに折り入ってお願いが…」
……いや、まて。
折り入ってお願いしたいのは僕です。
着信音の話聞いてくださいよ。
電話着信が来てんのに
「You`ve got mail . You`ve got mail.」
って携帯が知らせてくるんだぞ?
こんな突っ込みどころ満載の話をわかってくれないばかりか、話題を変えようとするなんて!
と、僕の切なる願いも虚しく I さんは続けた。
「解説をして欲しいんだ」
え??
解説??
なんだ I さん分かってんじゃん!!!
そうだよね、こんな面白い話だもんね、そりゃもっと詳しく聞きたいよね!
そうでしょうそうでしょう!!
I know , I know !!!!
むしろ I knew it!!!!
かねごん
「いや、僕もそう思っていたんですよ!やっぱりツッコミ担当の僕としては、『メールじゃないのかよ!!』っていう…」
I さん
「おぉ!そうか、金子くんもそう思っていてくれたんですね。ぜひ仙台の最終戦のサイドラインリポーターをやってほしいと思っていたんですよ!チームに対して、どんどん突っ込んだ質問をしてもらいたいね!詳細はディレクターの N が改めて電話するので、その時に!引き受けてくれてありがとう!!」
……あれ?
僕の携帯の着信音の話がナイナーズのサイドラインリポーターの話に変わっちゃたぞ。
こうして僕はTKbjリーグ レギュラーシーズン仙台vs秋田の試合のサイドラインリポーターをやることになったのだ。
TVの生放送。
しかもbjリーグとしては最後のレギュラーシーズン。
その中継に金子だと??
だ、だいじょうぶなのか。
なんか安易に引き受けてしまったけど……っていっても I さんのお願いじゃ断るわけにもいかないし……
ま、まぁ、なんとかなるでしょ。
もともといたチームだし、気楽なもんですよ。仙台の人たちは基本的に優しいし。
大体詳細もわかんないんだし、初チャレンジの僕にそんな高い要求はしてこないでしょwww
だいじょぶ、だいじょぶー🎶(小島よしお風)
「You`ve got mail . You`ve got mail.」
……「もしもし?」
電話の相手は N さんだ。
この N さんも I さん同様非常に良くしてくれた方の一人。
選手契約が切れている期間にバイトをさせてくれたりと、非常に助けていただいた。
現場での彼は鬼のように声を荒げ、現場で指揮を取る。テロップを出すタイミング、カメラで映す画面の指示、当時僕がお世話になったバイトの現場は鬼気迫る雰囲気であった。
しかし、一度現場を離れるとまるで仏。
なるほど、オンとオフの切り替えである。
大人のスキルだ。
近況報告(着信音の話)もほどほどに、仕事の詳細の話に。
N さん
「今回金子くんには仙台のベンチ裏に張り付いてもらって、タイムアウトでどんな話がされたのか、コートから試合を見てどうなのか?といったところをTVを見ている皆さんに伝えて欲しいんですよね。」
かねごん
「なるほど。なんか僕もチームの皆も笑っちゃいそうですけど、大丈夫なんですかねwところでメインで解説されるのはどなたなんですか?」
N さん
「久夫先生だよ」
佐藤久夫 先生……言わずと知れた、高校バスケットボール界最強の学校 明成高校の現指導者であり、長年バスケットボール界に携わっており、代表の監督などもされている。
え、まってまってまって。
全然気楽じゃないんですけど。
そんなの聞いてないんですけど。
それならもう少し僕だって時間をかけて検討したかったんですけど。
せめて覚悟を決めたいんですけど。
解説の久夫先生と全く違うこととか言っちゃったりしたらどうしよう考えただけでおぞましん;:pふ@wt3ptんdhz((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
N さん
「とりあえず、そういうわけだから!当日は12:00にゼビオアリーナに!楽しみにしていまーす!」
こ、これは……ピーーーーーーーーーーーンチ!!!
こうして僕は当日死の淵を見ることになるのであった……つづく。